新型コロナ感染症の重症化に血栓症が深く関与

コロナ情報

医療関係者用診療の手引き
一般にも有益情報満載

厚生労働省は、5月18日、『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き』の改訂版*¹を同省のWEBサイトで公開しています。

この診療の手引きは、実際に新型コロナウイルス感染症の医療現場で治療に当たっている国立国際医療研究センターの医師などでつくる委員会が、国内外の研究・報告をもとに、医療関係者を対象にまとめたものです。

改訂版には、新型コロナウイルス感染症の重症化には、血液が固まって血管が詰まる「血栓症」が深く関わっているとする新たな知見が紹介されています。

また、新型コロナウイルス感染症の治療薬として国内で初めて承認されたレムデシビルの使用方法など、最新治療のポイント、さらには現在臨床試験が進行中の治療薬や治療法など、一般の方にも有益な情報がいくつか盛り込まれています。

新たに作成された重症度分類

なかでも知っておきたいのは、診断基準のページで紹介されている、5月13日に薬事承認された「抗原検査キット」による抗原検査です。

このキットによる検査結果については、精度の点から、陰性であることを確認する目的での使用は適さないと明記しています。

そのうえで、「陽性の時は新型コロナウイルス感染症の確定診断だが、陰性の時は医師の判断でPCR検査を行ったうえで確定診断をする」としています。

また、今回の改訂版には、「息切れ」などの臨床症状を4段階に分類した「重症度分類」も追加されていて、重症度に応じて行われる治療のポイントを知ることができます。

人工呼吸器使用の観点から重症肺炎を2タイプに分類し、病態に応じた治療法が提示されているのも、新たな知見として参考になるのではないでしょうか。

重症化の回避には
血栓の存在に早く気づく

最近の研究では、新型コロナウイルス感染症の患者には、「サイトカインストーム」と呼ばれる免疫システムの暴走、つまり本来身体を守るために分泌されるサイトカインが、大量に分泌されることにより、血栓ができやすい状態になる例が少なくないことが指摘されています。

肺動脈に血栓、つまり血の塊ができると、血管が詰まって交通渋滞のような状態になり、肺で酸素をうまく取り込めない肺血栓塞栓症と呼ばれる状態に陥りやすくなります。

脳の血管が血栓で詰まれば脳梗塞ですが、改訂版では、実際に新型コロナウイルス感染症の若者が脳梗塞を起こした事例が紹介されています。

血栓が招くエコノミークラス症候群

そこで思い出していただきたいのが、大地震や台風などの災害で非難した人が車中泊を続けていると、血の流れが悪くなって血栓ができやすくなり、その血栓が血管の中を流れて肺を詰まらせ肺塞栓を起こすといった現象についてです。

いわゆるエコノミークラス症候群ですが、新型コロナウイルス感染症で血栓ができたときは、まさにこのメカニズムで、重症化し、ときに突然死にもつながりかねません。

こうした事態を防いで重症化を回避するには、血栓症が起こっていないか注意深く見ていくことがことのほか重要になってくるわけです。

重症化マーカーとして注目される「Dダイマー」

そこで、重症化を見極めるうえで指標となる検査所見、いわゆる「重症化マーカー」として、
①Dダイマーの上昇、②CRPの上昇、③LDHの上昇、④フェリチンの上昇、⑤リンパ球の低下、⑥クレアチニンの上昇、
の6項目を紹介しています。

このうち多くの方が「今まで聞いたことがない」と疑問に思うのが、
①の「Dダイマー」でしょうか。

Dダイマーとは、血液中に血栓ができているかどうかを判定する際に使われる凝固マーカーの1つで、血栓ができるとこの血中濃度が上がります。

したがって、Dダイマーの測定値が高値を示すときは、体内のどこかに血栓があることを意味します。対策として、手引きでは、
「Dダイマーが正常上限を超えるような場合には、ヘパリンなどの抗凝固療法を実施することが推奨される」としています。

呼吸器症状(息切れ)から
重症度を4段階に分類

改訂版のもう一つの目玉とも言えるのが「重症度分類」です。

新型コロナウイルス感染症で死亡するケースは呼吸不全によることが多いことから、重症度は「呼吸器症状(特に息切れ)」と「酸素化(肺のガス交換により血液に酸素が取り込まれること)」を中心に4段階に分類しています。

このうち「酸素化」の状態を客観的に判断するには、血液中の酸素濃度、つまり「SPO₂(血中酸素飽和度)」の測定が望ましいことから、この分類では、呼吸不全の定義を SPO₂ ≦ 93% としたと説明しています。

また、「軽症であっても、症状の増悪や新たな症状の出現に注意が必要」としたうえで、
「ここに示す重症度は中国や米国NIH(国立衛生研究所)の重症度とは異なっている」として、特に留意するよう注意を促しています。

軽症の多くは経過観察のみで自然に軽快

簡単にこの分類を紹介しておきましょう。
「軽症」は、SPO₂ ≧ 96%。咳だけで息切れはなく、多くは自然に軽快するが、発症2週目までに、急速に病状が進行することがあり、その場合は低酸素症を伴うことが多いため、高齢者や基礎疾患があるなどリスク因子のある患者は入院が必要、としています。

中等症は呼吸不全の有無で2段階に分類

「中等症」は、呼吸不全があるかどうかで2段階に分けています。
「中等症Ⅰ(呼吸不全なし)」は、93% < SPO₂ < 96%で、息切れや肺炎の所見があるため、入院は必要だが、集中治療室入りや人工呼吸器装着は必要ない、としています。

「中等症Ⅱ(呼吸不全あり)」は、SPO₂ ≦ 93%で、酸素投与が必要な状態です。
酸素マスクによる酸素投与でもSPO₂ ≧ 93%を維持できなくなった場合は、集中治療室入りや人工呼吸器の装着が必要で、高度医療を行える施設への転院を検討する必要が生じることもある、としています。

重症には集中治療室にて人工呼吸器管理が必要

「重症」は、「ICUに入室」または「人口呼吸器が必要」な状態で、人工呼吸器管理に基づく重症肺炎のL型(比較的軽症)とH型(重症)に2分類しています。

このうちH型については、ECMO(体外式膜型人工肺)導入の検討が必要となることもあり、適切に対応するには、集中治療室での監視が必要、としています。

参考資料*¹: 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第2版」
https://www.mhlw.go.jp/content/000631552.pdf