ゆがんで見えたら加齢黄斑変性を疑って!!

目の疲れ

ものの見え方が変わったら
「加齢黄斑変性」かも

ずっと見続けていたパソコン画面から目を離して遠くを見た瞬間、窓の向こうの景色がちょっとゆがんでいるように見えたときは、かなり焦りました。

「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」のことが頭をかすめたからです。

「えっ、まだそんな歳ではないのに!!」と、反射的に何度かまばたきをしてもう一度窓の外を見直すと、ゆがみが嘘のように消えていて、心底ホッとしたものです。

長時間に及ぶパソコン作業で目が悲鳴を上げていたようでした。

一瞬疑った加齢黄斑変性は、老眼や白内障ほどには知られてはいないものの、加齢とともに起こりやすくなる代表的な目のトラブルの一つです。

欧米人と比べると日本人には比較的少ないとされていますが、50歳以上の約1%に発症し、年齢が高くなるにつれてその割合が高くなると聞きます。

なお、40歳以上の女性に多い目のトラブル、「緑内障」についてはこちらを。

友人から「緑内障でレーザー治療を受ける」との報に、目を酷使している我が身も他人事と思えず、緑内障について調べた。中途失明の原因のトップが緑内障とのこと。視野狭窄に気づいた時点では、すでに進行している。40歳を過ぎたら年に1回の眼科受診が早期発の早道らしい。

視神経が集まる黄斑部
異常が起こるとゆがんで見える

私たちの目をカメラにたとえると、フィルムに当たる部分が「網膜(もうまく)」です。

この網膜のちょうど真ん中に位置しているのが「黄斑(おうはん)」と呼ばれる部分です。

黄斑部は直径2㎜にも満たない狭い場所ですが、ここには網膜で集めた外界からの光情報を脳に伝える視神経が集まっていて、ものの見え方に深くかかわっています。

年齢を重ねると、この黄斑部に老廃物がたまり、変性、つまり変質することがあります。

あるいは、「新生血管」と言って、弱くてもろい血管が黄斑部にできることがあるのですが、その新しくできた本来あるはずのない血管が破れたり、血液成分がじわじわと漏れ出たりすることがあります。

このような変性や異常が黄斑部に起こると、視力が急激に低下したり、ゆがんで見えるなど、ものの見え方が変わってくるようになったりするわけです。

これが加齢黄斑変性と呼ばれる目のトラブルです。

片目ずつ見え方をチェックし
加齢黄斑変性の早期発見を

かかりつけの眼科医によると、加齢黄斑変性が、黄斑部にできた新生血管からの出血を原因として起きている場合は、視力を完全に取り戻すことは難しいものの、その時点での視力を維持、あるいは多少なりとも改善する治療法はいくつかあるそうです。

しかし、黄斑部の変性によりものの見え方が変わってきているような場合は、残念ながら現時点で有効な治療法はなく、最悪、失明ということにもなりかねないとのこと。

実際、日本人の中途失明(幼児期以降に病気や事故などにより失明すること)の原因の4位(9.1%)に、この加齢黄斑変性がランクされているそうです。

ちなみに、この中途失明の1位は緑内障による失明で21.0%、2位は糖尿病性網膜症(15.6%)、3位網膜色素変性症(12%)となっています(2014年調査による)。

最悪の事態を防ぐには、やはり日頃からものの見え方に注意を怠らないことです。

片目をふさいで、左右それぞれの見え方をチェックし、以下のような異常を自覚したら早めに眼科を受診し、視力検査や眼底検査を受けることをおすすめします。

  1. ものがゆがんで見える
  2. 見ようとする視野の中心が黒く見える
  3. 目がかすんで見えにくい
  4. 視力が急激に低下した
  5. 色を見分けにくい

日本眼科医会はホームページ上で、「見え方チェックシート」*¹を提示し、「線がゆがむ」「中心が見えない」「一部が欠けて見える」など、見え方がおかしいときは、すぐに眼科専門医を受診するよう呼び掛けています。

セルフチェックに是非活用してみてください。

加齢黄斑変性の予防は
禁煙とDHAの摂取から

加齢黄斑変性の予防として、眼科医がまずあげるのは「喫煙者はただちに禁煙すること」です。

喫煙者は喫煙していない人に比べて加齢黄斑変性になる可能性が高く、リスクは約2倍だとする報告もあるそうです。

禁煙に続いてあげられる予防策が、食生活の見直しです。

たとえば、目の健康維持に欠かせない栄養成分の一つに、サバやイワシ、サンマといった青魚やマグロのあぶらに多く含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)があります。

網膜や視神経の見る機能を強力にバックアップしてくれる重要な成分なのですが、体内では合成されないため、毎日の食事からコンスタントに摂り続ける必要があります。

肉類中心の食事を続けていると、肉のあぶらにはDHAが含まれていませんから、DHA不足から見え方に支障をきたすことになってしまいますからご注意を!!

黄斑部の健康に欠かせない
ルテインをあぶらと一緒に

DHA同様にビタミンA(βカロテン)やビタミンEなどのビタミン類や亜鉛なども目の健康に欠かせない栄養素です。とりわけ黄斑部の栄養源として、ルテインが大切です。

ルテインは、ほうれん草やケール、キャベツ、春菊といった緑黄色野菜に豊富に含まれているカロテノイド(脂溶性の天然色素)の一種です。

ルテインは、パソコンやスマートフォンなどの電子機器やテレビなどから出ている「ブルーライト(青い光)」と呼ばれる波長の短い有害な光を吸収して、黄斑部が変性するリスクを下げていることがわかっているそうです。

同時に、ルテインのもつ抗酸化作用も、活性酸素による黄斑部の変性を抑える効果が期待できるようです。

ルテインは毎日の食事から

最近はルテインのサプリメントも各種売り出されています。

それらを活用するのもいいでしょうが、やはり必要な栄養素は毎日の三度三度の食事から摂るのが一番です。

ルテインは脂溶性、つまりあぶらに溶ける性質がありますから、あぶらと一緒に摂ると吸収がよくなります。

手軽なところでは、サバの水煮缶とホウレン草の和え物などは、黄斑部の健康に最適のレシピではないでしょうか。

ちなみに水煮缶の汁の部分にもDHAが豊富に含まれていますから、捨てずにそのまま全部使うのがコツです。

DHAが豊富な青魚の缶詰の活用法についてはコチラを!!

血液さらさら効果などにより動脈硬化対策にDHA・EPAがいいことはよく知られている。サプリメントで補給している人も少なくないが、毎日の食事で青魚を食べて補給することをすすめたい。新鮮なうちに刺身で食べるのが一番だが、缶詰も負けていない。その選び方を……。

視力障害の程度によっては助成の対象に

加齢黄斑変性により視力に障害が生じた場合は、申請すれば、その障害の程度(等級)によっては身体障害者手帳の交付対象となり、医療費の助成や公的あるいは民間レベルのさまざまなサービスを受けることができます。

国や自治体の福祉サービスの利用には身体障害者手帳の取得が条件になっているものが少なくない。ところで、この手帳を取得できるのはどのような障害を抱えている人なのか、この手帳を所持しているとどんなサービスを受けることができるのか、まとめてみた。

また、視力障害の程度が日本年金機構が設けている認定基準を満たせば、申請により、「障害年金」もしくは「障害手当金」を受け取ることができます。

病気やけがにより心身に障害を負った場合、国から障害年金を受給できる。これには、障害基礎年金と障害厚生年金がある。いずれにも受給要件があり、加入している年金制度によって、また障害の程度により受給の可否や年金額が異なる。そのポイントを。

参考資料*¹:日本眼科医会「見え方チェックシート」