今冬のインフルエンザは
例年の1.5倍流行のおそれ
昨年の冬は、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行が危惧されたものの、幸い同時流行は見られませんでした。
新型コロナ対策としての「マスクの着用」「こまめな手洗い・消毒」「3密(密閉、密集、密接)の回避」「十分な換気」といった感染対策の徹底が、インフルエンザの感染予防にも効果的であったため、と説明されています。
ならば、新型コロナ対策としての感染対策を引き続き励行している今年の冬も、昨冬同様にインフルエンザの流行は避けられるのではないかと考えたいところです。
ところが、どうもそういうわけにいかないようです。
日本感染症学会(舘田 一博理事長)は、9月29日、
「2021-2022年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方」*¹
を公表しています。
そのなかで、昨シーズンはインフルエンザ患者が激減したため、インフルエンザに対する免疫が形成されていない人が多いことから考えると、
「今年の冬は例年の1.5倍の大きさの流行になる可能性がある」と予測――。
今シーズンこそ、インフルエンザワクチンを積極的に接種するよう呼びかけています。
インフルエンザワクチンは
10月末までに接種を
気になるのはインフルエンザワクチン接種の時期ですが、
「理想的には10月末までに接種することが推奨される」
としたうえで、以下の2点を注意点としてあげています。
- 新型コロナワクチン未接種の人は、コロナワクチンを優先して接種する
- 新型コロナとインフルエンザのワクチンを接種する際は、片方のワクチン接種を受けてから2週間以降、つまり13日以上の間隔を空けて別のワクチンを接種する
ちなみに、厚生労働省の発表によれば、今シーズンのインフルエンザワクチンの供給量(確保量)は、過去最大だった昨シーズン(2020-2021)に比べると2割程度減少はするものの、ほぼ例年なみだということです。
インフルエンザワクチンの接種は10月から全国各地で始まっていますが、ワクチンの供給は、12月中旬頃まで順次出荷が続く見込み、とのことです。
従来から、インフルエンザに罹患すると合併症を起こすリスクが高いとされる以下の因子を有する人(インフルエンザハイリスク者)を含め、生後6か月以降で禁忌でない人には、インフルエンザワクチンの接種を強く推奨するとしています。
ワクチン接種が強く推奨される
インフルエンザハイリスク者
インフルエンザウイルスに感染しやすく、感染すると合併症を起こすリスクが高い、いわゆるインフルエンザハイリスク者としては、以下があげられています。
- 6カ月以上5歳未満の小児
- 65歳以上の高齢者
インフルエンザワクチンの供給が始まり次第、速やかに接種するのが望ましい - 慢性呼吸器疾患(気管支喘息やCOPD*など)がある人
*COPD(シーオーピーディー)とは慢性閉塞性肺疾患のこと。 - 心血管疾患(高血圧単独を除く)がある人
- 慢性腎・肝・血液・代謝(糖尿病など)疾患がある人
- 神経筋疾患(運動麻痺、痙攣、嚥下障害を含む)がある人
- 免疫抑制状態(HIV*や薬剤によるものを含む)にある人
- 妊婦(妊娠中のワクチン接種により母体および新生児のインフルエンザ感染を減らすことができる)
- 長期療養施設の入所者
- 著しい肥満状態の人
- アスピリンの長期投与を受けている人
- がん患者
なお、新型コロナウイルス感染症に罹患したものの、無症状あるいは軽症で自宅またはホテルなどで待機中の方は、観察期間終了後、直ちにインフルエンザワクチンの接種を。
新型コロナウイルス感染症患者の濃厚接触者と認定された方は、観察期間終了後にインフルエンザワクチンを接種するのが望ましい。とされています。
インフルエンザ接種に加え
感染対策の徹底も
インフルエンザの流行状況を毎年分析している国立感染症研究所の報告によれば、9月27日から10月3日までの1週間に報告のあったインフルエンザの患者数は、全国で5人にとどまっており、インフルエンザについては、今年はまだはっきりした流行の兆しがみられません。
例年この時期には数百人程度の報告があることを考えると、新型コロナウイルス対策を徹底していることが、インフルエンザの流行にも歯止めをかけるかたちになっているようです。
ただし、インフルエンザが全国的に流行するのは、多少の地域差はあるものの、毎年、早くて11月以降であり、新型コロナウイルスと同時流行するリスクは依然として残っています。
したがって高齢者等のハイリスク者は、自治体から通知を受け取ったら、早めにインフルエンザワクチンを接種しておくことをおすすめします。
ただし、インフルエンザワクチンには、
「ウイルスに感染しても発症しにくく、もしくは発症しても重症化を防ぐ」効果が期待できるものの、必ず感染を防ぐというわけではありません。
そのため厚生労働省は、
①フィジカルディスタンス(身体的距離)の確保など、3密(密閉、密集、密接)を避ける
②こまめな手洗いや咳エチケット(マスクの着用)を実施する
③定期的な清掃、十分な換気を行う、
といった感染対策の徹底も、引き続き励行するよう促しています。
ワクチン接種の費用負担は
全国一律ではない
インフルエンザワクチンには、明らかな発熱(37.5℃以上)が認められる場合など、接種不適当と判断される場合があります。
また、ワクチン接種時の体調によっては、副反応が生じることもありますから、接種後に体調に異変が生じたら、速やかにかかりつけ医に相談することをおすすめします。
なお、インフルエンザワクチンの接種は、原則全額自己負担です。
ただし、定期接種対象者である65歳以上の高齢者と上記のハイリスク者の条件に該当する人は、自治体によっては公費の助成が受けられます(自治体からの通知を参照)。
参考までに、インフルエンザワクチン0.5ml・1回接種で、自己負担額は3000~5000円、65歳から74歳では2000~3000円、75歳以上では全額公費負担参照(自己負担0円)、といったところが一般的です。